参考文献リスト
第1回高橋源一郎×今野晴貴×藤田孝典
これからの民主主義を「足元」から考える ―「日常」と「政治」をつなぐ知性
「足元からの民主主義プロジェクト」では毎回、勉強会のテーマに関連する参考文献リストを挙げていきます。
*ここで挙げた文献はごく一部で、入門として実行委員が挙げたものです。
「足元からの民主主義プロジェクト」では毎回、勉強会のテーマに関連する参考文献リストを挙げていきます。
*ここで挙げた文献はごく一部で、入門として実行委員が挙げたものです。
今回のゲスト、そして今後の主催になった、高橋源一郎の著書です。 高橋自身理解するのに長い時間かかったという「民主主義」や、鼎談内でふれられた「弱さ」の研究についての著作を紹介します。
高橋源一郎/朝日新書、2015年
本プロジェクトの主催者である高橋源一郎の著書。日常の中で生じる多様な問題をわかりやい言葉で論じていく。わたしたちの日常から民主主義を考えるための糸口を与えてくれるだろう。テーマごとに関連する参考文献が挙げられているので、気になったテーマを深く掘り下げていく際の道案内もしてくれる。
高橋源一郎、SEALDs/河出書房新社、2015年
2015年夏、国会前でSEALDsの学生たちが声をあげた。それがきっかけとなって、多くの人たちも国会前に行き、「民主主義ってなんだ?」ということを考えたにちがいない。本書を読めば、そんな運動の中心にいた彼・彼女らの思いが伝わってくる。若い世代が民主主義をつくっていく、そんな躍動感にあふれた一冊だ。
高橋源一郎、辻信一/大月書店、2014年
本書のテーマは「弱さ」である。「弱さ」は唾棄すべきものとして見なされがちであるし、わたしたちの社会では「弱さ」を抱える人々の多くが排除されてしまっている。しかし、「弱さ」を抱え込んでいる社会の方が、じつはずっとタフで豊かな社会であることが見えてくる。
民主主義をめぐっては過去様々な議論が知識人によってなされてきました。そんな議論の一端にふれ、民主主義について深く考察するための文献です。
ナオミ・クライン/岩波書店、2011年
ロシア・エリツィン大統領が自由市場改革を遂行するために、抵抗する議会を文字通り砲撃した時、西側諸国は「民主主義にとっての勝利」と熱烈に歓迎した。彼らのいう「民主主義」とは市場原理のことなのである。市場の論理によって、社会のあらゆる関係がつくりかえられていく。そうした資本主義の様相を描き出し、新自由主義とはなにか、その本質を鮮やかに浮かび上がらせた渾身のルポルタージュ。新自由主義と民主主義の関係を考える上で必読の一冊。
エルネスト・ラクラウ、シャンタル・ムフ/ちくま学芸文庫、2012年
原題は「Hegemony and Socialist Strategy」。エコロジーやフェミニズムなど新しい形態の民主主義闘争と労働運動の「節合」を論じ、その重要性を強調する。なお、本書はスペインのポデモスでも教科書として扱われているなど、オルタナティヴな社会を目指していくための変革戦略としてヨーロッパで注目を集めている理論としても知られている。
高橋曰く「民主主義というのは、僕が体で感じたこと。」 今野や藤田も、労働問題と貧困問題というそれぞれの現場での取り組みを通じて民主主義の理解が深まったといいます。 民主主義を「足元」から考えるために自分の身の回りで起こっていることについてリアリティをもって捉える。そのために参考となる文献を紹介します。
熊沢誠/岩波書店、2010年
“karoshi”が国際語になるほど日本に特殊な過労死・過労自殺問題。労働問題の大家である著者は、本書で50件以上の事例を取り上げ、被害者の受難、遺族の闘いを詳細に記述している。そしてその中から、過労死を生み出し続けてきた日本社会の構造に鋭く切り込む。日本で働くということについて考えるためには必読である。
今野晴貴/星海社新書、2013年
違法労働が蔓延する日本において、違法状態を正し、権利を実現する方法について、個々の現場レベルでの紛争解決から社会全体へと視点を広げて考察する。さらに、「労働」によって日本社会そのものがどのように形成されてきたのかを解き明かし、「労働のあり方」を変える可能性を提示する。私たちがいかにして民主主義を取り戻すことができるのか、ぜひとも本書を手引きにして考えたい。
田中宏/岩波新書、2013年
戦後日本の外国人政策の概観と変遷がまとめられており、戦後責任に対する日本の姿勢が今日まで影を落としていることがわかる。ヘイトスピーチや外国人労働者、難民問題など、外国人と日本をめぐるすべての問題を考える上で基本となる必読書。
影書房/2002年
日常から政治、また今年はデモの中でもよく使われた「国民」という言葉。しかし、この「国民」というものは言うほど自明なものなのかと、この本は問いかける。「半難民」とは、著者の徐京植氏が自らを含めた在日朝鮮人の立場を指して表した言葉であるが、日本で在日朝鮮人が置かれている不安定な法的地位をまさに言い表している。他者に向き合い損ねてきた歴史の延長に、ヘイトスピーチが吹き荒れるいまの日本がある。現状を実際に変えていくために、向き合うべき一冊。
目取真 俊/日本放送出版協会、2005年
「戦後何年」という言葉を何の疑いもなく使う時、私たちの認識からは、「戦後何年」と簡単に言える国がどれだけあるのか、日本の「戦後の豊かさ・平和」が何の犠牲の上に立っているのか、そもそも「戦後」の日本は平和だったのかという視点が抜け落ちてはいないか。沖縄戦と基地問題の本質を描き、本土の人間に鋭く突きつける一冊。
伊波洋一/かもがわ出版、2010年
「普天間基地の辺野古移設問題」とは何なのか。世界一危険と言われる普天間基地はなぜできたのか。なぜ「移設先」が辺野古なのか。沖縄基地問題の本質をコンパクトにまとめ、「基地負担はしょうがない」「米軍は抑止力になる」「基地がないと沖縄の経済は成り立たない」という固定観念を解きほぐす。
原田正純/岩波新書、1972年
公害病の中でも大規模で最も悲惨なものの一つである水俣病。その発見から、公害認定、被害者の救済への取り組みまでがコンパクトにまとめられている。戦後日本の高度経済成長の裏で何が起きていたのかを知るためには必読。
レイチェル・カーソン/新潮社、1974年
言わずと知れた環境問題の古典的名著。本書は、農薬などの化学物質の使用がいかに生態系を破壊しているのかを平易な言葉で論じる。1962年に出版された本書が告発する問題は、現在においても決してアクチュアリティを失っていない。
スベトラーナ・アレクシエービッチ/岩波現代文庫、2011年
今年ノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家、スベトラーナ・アレクシエービッチ氏の代表作。チェルノブイリ原発事故によって人生を狂わされた当時の住民、原発作業員、事故収束に動員された兵士、事故後に生まれた子供たちなど、多くの関係者から証言を集めたノンフィクション。福島原発爆発から約5年が経過した今、フクシマに改めて向き合う機会にもなる。
広河隆一/岩波新書、2002年
中東問題の始まりであり、今なお続いているパレスチナ問題の歴史を19世紀から概説している。本書を読むとこの問題が、単なる宗教紛争ではなく、すぐれて普遍的な世界的な課題を表していることが分かる。また序文では50年近くこの問題に取り組んでいる著者の、パレスチナとの出会いが書かれており、「他者」の問題と自分がどう向き合うか考えさせられる。
酒井啓子/岩波ジュニア新書、2014年
「アラブの春」から数年が経過したが、「民主化」が進むどころか、中東情勢はより混沌としてきている。こうした状況を指して安易にイスラーム原理主義という言葉が持ちだしたところで、何も理解したことにはならない。著者は、「民主化」の主体としての若者と、中東政治にはたらく「外圧」に着目することで、中東世界の今を描き出す。
鼎談では、3人のこれまでの「生き方」についても話されました。藤田曰く「社会に折り合いをつけない生き方」。学生である私たちがそんなことを考える上で参考になる本です。
鎌田慧/岩波現代文庫、2008年
工場や公害の現場に入って行った筆者の描写から、「豊かさ」というものが1人1人の人間の生を犠牲にして成り立っているということがリアルにわかる。自分を犠牲にしてでも闘う人がいるからこそ民主主義は持ちこたえると述べ、「社会と折り合いをつけない生き方」を若者に提唱する。
藤田孝典/堀之内出版、2013年
誰もが貧困に陥りうる時代。孤立死が起こらない、人が当たり前に人間性を尊重される社会を作るにはどうしたらいいのか――。自らNPOを立ち上げ、試行錯誤を続けた著者の10年間を振り返る。生活保護を受けさせないという行政の「不正」行為の実態には憤りを覚えざるを得ない。
エドワード・W・サイード/平凡社ライブラリー、1998年
パレスチナ生まれの研究者である著者が論じた独自の知識人論。常に抑圧されている人々の立場に立ちながら思考を練りあげてきた筆者の語る言葉は、何のために学ぶのかということを考えさせられる。
ノーム・チョムスキー/青弓社、2006年
知識人とは誰か。知識人の責任とは何か──。著名な言語学者であると同時に、知識人として社会批判をし続けている著者が読者に滔々と語りかける。ベトナム戦争を主要なトピックとした著作であるが、本書での問題設定は今なお色あせない。